性能をも包括するPOCのデザイン哲学とは POC VENTRAL LITE

ロードバイクの世界では、機材の選択がパフォーマンスに大きく影響します。中でもヘルメットは、エアロダイナミクス・安全性・快適性という3要素を高次元でバランスさせる必要がある、極めて重要な装備です。今回は、スウェーデン発の革新的ブランド「POC(ポック)」が手がけるフラッグシップモデルの中から軽量性を追求した「VENTRAL LITE(WideFit)」をご紹介します。
実はVENTRALにはいくつかのモデルが存在します。
基本となるのはVENTRAL MIPS。こちらはMIPS(多方向衝撃保護システム)を搭載しており、回転衝撃から脳を保護する設計が特徴です。次にVENTRAL AIR。こちらはその名の通り空力特性を向上させ、ベンチレーションホールの数を増やし、通気性を最大限引き出したモデル。そして軽量性を重視し、安全を確保しつつ可能な限り軽量を追求したVENTRAL LITE。どのモデルも総じてエアロ、つまり空力の良さを意識したオールラウンドモデルです。独自の空力設計と最先端の安全技術が融合し、快適性に至るまで細やかに設計されたVENTRAL。実際の使用感を交えつつ、詳しく見ていきましょう。
デザインとブランド哲学:POCらしさが光るフォルム
VENTRAL LITEの第一印象は、なんといってもその独特なフォルムです。海外ではEFエデュケーション・イージーポストがPOCを装着しており、プロトンの中でも鮮やかなピンクがデザインと相まって目立つ存在です。日本人選手の留目選手も着用しています。日本国内では愛三工業レーシングチームが着用しています。POC独自のエアロデザイン哲学「Whole Helmet Concept」に基づき、単に風を切るのではなく、「どう風を流すか」にまでこだわった形状が特徴です。
正面から見るとコンパクトで丸みを帯びたシルエットですが、上から見ると空気の流れを意識した独特の空洞形状が確認できます。従来のエアロヘルメットに比べて開口部が大きく、熱がこもりにくい印象です。カラーリングもPOCらしく洗練されており、昨今のバイクやウェアのデザインとも合わせやすいです。
空力性能:風を「逃がす」設計思想
POCはスウェーデンのスポーツ科学研究機関と連携し、CFD(数値流体力学)や風洞実験によって空力設計を徹底的に突き詰めています。VENTRALの特長は「風をまとい、流す」ことにあります。
実際、前面に大きく開いた空洞が走行風を効率的に取り込み、内部の空洞を通じて後方へと流します。この「内部換気とエアロの融合」は、ライダーがスピードを出している時に最も効果を発揮。向かい風や高速巡航中でも風の抵抗が少なく、頭が浮くような感覚を受けます。また、サイドからリアにかけてのラインが非常に滑らかで、頭部周辺にできる乱流を減らす工夫が施されています。これは集団走行時の空気の整流にも寄与しており、レースでも確実にアドバンテージを得られるでしょう。
快適性:軽量かつ優れたベンチレーション
VENTRAL LITEは非常に軽量で、Mサイズで約220gとVENTRALシリーズ内でも最軽量。空力性能と安全性を持ちながら、これほどの軽さを実現していることは驚きです。
ベースとなっているVENTRAL AIR から、アウターの硬いPCシェルを必要最低限に抑え、EPSライナー黒い部分を露出させました。そして、細くなったワイヤー調整システムやストラップ、ライナー、シェルに至るまで、あらゆる点で軽量化に向けた再設計が施されたことでこの軽さを実現しています。
ヘルメットはそのフィット感が非常に重要で、サイズや形がしっかりフィットすることで重さをそれほど感じることは無くなるのですが、それでも週末に一日中走るサイクリストにとっては、このわずか数十グラムの軽さが疲労度の軽減に繋がります。そういった意味ではやはり「軽量」であることは非常に重要な要素なのです。
さらに特筆すべきは「ベンチレーション性能」です。エアロヘルメットにありがちな蒸れを感じにくく、真夏のライドでも涼しさを保ちやすい設計です。これは前述のヘルメット内部の流路設計がうまく機能している証拠でしょう。
またワイドフィット(WF=ワイドフィット)モデルは頭部形状に合わせた設計がされており、日本人の頭にもフィットしやすいモデルになっています。筆者は後頭部が絶壁なためなかなか合うヘルメットが少ないですが後頭部、側頭部に違和感を感じることはありませんでした。
フィッティングシステム:ダイヤル調整で安定感抜群
ヘルメット選びで最も重要なのが「フィット感」。POC VENTRALは、リアのダイヤル式アジャスターを使って頭囲の微調整が可能で、片手でも簡単に操作できます。
サングラスとの干渉も起きにくく、POC製のアイウェアはもちろん、他ブランドとの相性も良好です。エアロを意識しつつも、トレーニングやグランフォンドといった長時間の使用にも向いている点は大きな魅力です。
総評:レース志向のライダーにも、快適重視のロングライダーにも
POC VENTRAL LITE(WF)は、ただの「軽量エアロヘルメット」にとどまりません。空力性能と快適性、安全性の3つを高水準でまとめた完成形に近い一品です。日常のトレーニングからレース本番まで幅広く活用できます。
価格帯はやや高めではあるものの、その価値は十分にあると言えます。ヘルメットに妥協したくないライダー、また一歩先の機材で自分を高めたい人には、ぜひ一度試していただきたい逸品です。
常に身に着けるヘルメットだからこそ変えるだけで、ライドの質が大きく変わります。POC VENTRAL LITEは、そのことを実感させてくれるヘルメットです。普段使いからレースまで幅広く対応できるヘルメットがここにあります。店頭にてぜひ試着してその性能を体感してほしいです。
POC VENTRAL LITE (WF)
カラー:Uranium Black Matt、Hydrogen White/Uranium Black Matt、Granite Grey Matt、Hydrogen White Matt
税込価格:¥46,200
サイズ:S 55-58cm / M 59-62cm
THE BASEではPOC以外のヘルメットブランドも取り扱いをしております。